70年代にヒット曲を連発したエレクトリック・ライト・オーケストラ(E.L.O.)のリーダーで、プロデューサーとしても有名なジェフ・リンの、今のところ唯一のソロアルバムです。
特にE.L.O.解散後のジェフは本当にすばらしい仕事ぶりです。見事にビートルズのジョージ・ハリスンを復活させた『CLOUD NINE』、トム・ペティの『FULL MOON FEVER』、そしてビッグネームの覆面バンド、トラヴェリング・ウィルベリーズの2枚のアルバムと、どれをとっても一つ一つの楽器の音色にまでこだわったものばかりです。
それら一連のプロデュース作品の中でも白眉がこのジェフ自身のソロでしょう。まず1曲目の「EVERY
LITTLE THING」。ドラムとベースだけのスカスカなイントロに続いてすぐに出てくるエコーなしの生っぽいヴォーカルとホーン、そうかと思うと今度は奥行きのあるコーラスやキラキラしたキーボードが背後に現れます。まともに聴いていると心地よいめまいすら覚えます。
50年代のロックンロールやポップス、そしてフィル・スペクター、ビーチ・ボーイズ、ビートルズといったポップ史に残る巨人たちの遺産をしっかりと現代に受け継いで昇華させた手腕は、商業的成功とは別に評価されて然るべきだと思います。しかも、最後に言うのもなんですがこの人、歌もうまいし曲もイイんです。
2000/10/29