ジャーマンロックを代表するバンド、カンの5枚目です。本来フリーキーさが真骨頂である彼らにしては完成度が高いという点で、これを最高傑作もしくは一つの到達点とする考えも大いにアリでしょう。
水の音などのSEを絡めながら、ヤキ・リーヴェツァイトの淡々としたビートが独特のグルーヴ感を生み出し、イルミン・シュミットのゆらゆらと浮遊するキーボードやミヒャエル・カローリの時折トロピカルな感じもする心地よいギター、そしてダモ鈴木のヴォーカルさえも楽器の一つのように溶け合って、音の桃源郷を創り出しています。そして音楽総監督的な立場のベーシスト、ホルガー・シューカイの存在。
メンバー一人一人にいちいちカリスマ性を感じるという点ではソフト・マシーンやヘンリー・カウに近いものがあります。あるいは、後のロックシーン与えた影響からするとそれ以上かも。実際、P.I.L.のジョン・ライドンやウルトラヴォックスのジョン・フォックス、バズコックスのピート・シェリーといったパンク〜ニューウェイヴ系のカリスマたちがこぞってこのバンドからの影響を公言しています。
それにしてもこれが本当に2トラック?信じられません。バンドのクリエイティヴィティが頂点に達し、メンバー間のせめぎ合いが化学反応を引き起こした結果のミラクル。
2010/09/01