70年代も半ばにさしかかるとプログレッシヴ・ロックは徐々に形骸化し多くのプログレバンドが様式美の世界に突入しつつありました。そんな中、ヘンリー・カウは真の意味でプログレッシヴなサウンドを追求しています。ギターのフレッド・フリスをはじめメンバー達のその後の活動の広がりもすさまじいものがあり、そういった意味でも重要なグループと言えるでしょう。
アナログ盤でA面に収録された3曲は高度なテクニックに裏打ちされた複雑な楽曲ばかりです。特に「RUINS」はヨーロッパ的な典雅な響きの中に非常にクールな視線が感じられる大曲で、みごとな構成力に圧倒されます。一方B面はフリーインプロヴィゼイションによるもので、ロックどころかフリージャズとも現代音楽ともつかないオリジナリティ溢れるアヴァンギャルドな世界を描き出しています。
ところでバンドはこの後スラップ・ハッピーとのコラボレイションで2枚のアルバムを出しますが、結局アンソニー・ムーアとピーター・ブレグヴァドはお払い箱になってしまい、ヴォーカルのダグマー・クラウゼだけが残ります。もしかしたらカウ的にはダグマーの声だけが目当てだったのかも。
2002/12/25