これまで数え切れないバンドが様々な理由で離合集散を繰り返していますが、個人的にもっとも再結成がうれしかったのがこのスラップ・ハッピーです。あまりに寝耳に水の出来事で驚きました。ドイツの歌姫ダグマー・クラウゼ、アメリカの吟遊詩人兼風刺漫画家ピーター・ブレグヴァド、イギリスの前衛音楽家でマルチミュージシャンのアンソニー・ムーアの3人がまた一緒にやっているという事実だけで十分意味があり、実存主義的な感動すら覚えてしまいます。
20年以上のブランクをものともせず、昔のアヴァンギャルドさを隠し味に、サウンドはむしろ深遠さを増しており、各人のテクニックの向上や機材の発達も手伝って、全体に完成度の高い端正なアルバムに仕上がっています。例えば、もともとピーターのソロアルバムに収録されていた1曲目「SCARRED FOR LIFE」などは、ダグマーがヴォーカルをとることによって新たな生命を吹き込まれたようです。
ただダグマーの声に以前のコケティッシュさが薄れてしまった感じもしますが、私自身も含めてみんなそれなりに年輪を重ねているのだから、敢えて不問ということにしておきましょう。
2000/09/19