マンチェスターのインディペンデントレーベル、ファクトリーに所属していたポストパンクの最重要バンド、ジョイ・ディヴィジョンが、ヴォーカルのイアン・カーティスの自殺後に発表した2ndアルバムです。
ピーター・サヴィルのデザインした美しいジャケットに包まれ、マーティン・ハネットのプロデュースによるゴシック系の元祖とも言うべき深遠なサウンドに彩られてはいるものの、中身はむしろ無防備な印象を受けます。これはメンバーの稚拙なテクニックもあるでしょうが、ほとんどがイアンのキャラに起因するものと思われます。パンクが外に向けて発したものを、彼の場合は逆に内に向けて発しており、2曲目の「ISOLATION」を始めとして歌詞の内容はあまりにも重い内容となっています。ここで重要なのは彼が本気だったという点です。同時代にはバウハウス、キリング・ジョーク、エコー&ザ・バニーメン、キュアー等々重要なポストパンクのバンドがたくさんありましたが、ジョイ・ディヴィジョン(イアン)の本気度は群を抜いており、サウンド的にはどのバンドよりもヘタクソでありながら、どのバンドよりも美しく輝いています。
イアンを失ったメンバーはその後バンド名をニュー・オーダーと変えて再スタートし、イギリスを代表するバンドになりました。他のメンバー達のチャランポランなキャラがイアンの幻影を振り払った末の成功と言えるでしょう。
2002/08/03