80年代の幕開けとともにプログレというカテゴリーからの脱却を図ったジェネシスのサウンド面のリーダー、トニー・バンクスの2ndアルバムです。
当時最先端だったリンドラムを導入してタイトなリズムを強調しながら、メロディは非常にポップで、ときおりビートルズからの影響も垣間見られます。こういった英国的なメロディを打ち出している点では、時代を反映したサウンドも含めてこの後デビューしたニック・カーショウに通じるものがあり、後に『STILL』においてニックをヴォーカリストとして招くのも納得できます。
ここで特筆すべきはアルバム全体を通してトニー自身がヴォーカルを披露している点。お世辞にもうまいとは言えませんが、ニューウェイヴの嵐が吹き荒れた後のこの時代なら、この程度のヴォーカルは充分アリ。それどころか、朴訥な歌いっぷりが、微妙に様になっていないポップサウンドにハマっています。1stソロやバンクステイトメントのようにヘタに歌唱力のある凡庸なヴォーカリストを起用するよりよっぽど良いのでは…。
ちなみにこのジャケットの書き殴ったようなラフなタッチ、どこかで見覚えがあると思ったら前年に出た『THREE SIDES LIVE』のアレを書いたビル・スミスという人でした。
2004/12/10