ワイアーのグレアム・ルイスが本家の『虚実の構造』と平行して制作した自身のソロプロジェクト、ヒー・セッド名義のアルバムです。
コリン・ニューマンがワイアーとは趣を異にするソロを発表したのに対し、グレアムが創り上げたサウンドはかなりワイアーに近い肌触りです。硬質なビートにそこはかとなくノイズを絡ませる手法はまさに再結成後のワイアーの持ち味であり、このアルバムの中の何曲かがそのまま本家のアルバムに収録されていても違和感はないと思われます。当の本人はまったくワイアーには向かないと言っている冒頭の「WATCH
・TAKE ・CARE」からしてワイアー節炸裂だし、このアルバム中最もメロディアスな3曲目「COULD
YOU?」もしっかりワイアーしてます。
と、このように書くとまるでグレアムこそがワイアーサウンドの核のように感じられますが、必ずしもそうとも言い切れません。これはこれですばらしい作品なんですが、やっぱり何かが足りないんです。その何かとはコリンが持っているものでもブルース・ギルバートが持っているものでもなく、ワイアーという集合体の中で異化作用を起こしたときにこそ生じるものなんだろうなと私は了解しています。
ところでこのグレアムの顔、微妙にアーノルド・シュワルツネッガー似?
2003/03/10