耽美的かつクールなサウンドで、英国内での知名度を徐々に上げてきたスコットランド出身のシンプル・マインズが、一気にスケールの大きなバンドに変貌した6作目です。
サウンドが変化した要因は、間違いなくプロデューサーのスティーヴ・リリィホワイト。彼が同時期に手掛けたU2の『WAR』、ビッグ・カントリーの『THE CROSSING』と同様、ゲイトリヴァーブを駆使したドラム炸裂のダイナミックなサウンドです。冒頭の「UP ON THE CATWALK」や、第1弾シングルとなった「WATERFRONT」など、アルバム通して躍動感たっぷり。そのグルーヴにノって、いかにもイイ人そうなルックスのヴォーカリスト、ジム・カーが雄々しく歌い上げる様にはグっとくるものがあります。また、上述の二バンドと違う点は、キーボードの果たす役割の大きさ。マイケル・マクニールが実に変幻自在なバッキングをこなしています。
この後彼らは映画の挿入曲「DON'T YOU (FORGET ABOUT ME)」の大ヒットによって全米でもブレイク、スタジアム級のバンドとなり、その上、ジムのイイ人キャラが定着してチャリティイヴェントの常連となっていきます。ただ、それと反比例するかのように、そこはかとなく漂っていた垢抜けなさが一気に後退してしまったのは個人的に残念。
2004/02/17