MTVを巧みに利用してグラミー賞を2度も獲得した80年代を代表する実力派シンガー、ロバート・パーマーは、優れたヴォーカリストであるだけでなく、幅広い音楽性を持ったサウンドクリエイターでした。一枚のアルバムの中にハードロック、ファンク、ソウル、ニューウェイヴ、レゲエ、エスノ、スタンダードなどを混在させてしまう雑食ぶりでしたが、この14枚目は、率直かつ安直なタイトルから分かるように、彼にしては珍しく一定の方向性を持たせたアルバムになっています。
一般にダンディと言われるブライアン・フェリーやスティーリー・ダンなどと比べても、この人ははるかに粋です。スーツ姿で美女軍団をバックにヘビメタを歌うたたずまいももちろんですが、音楽に対する無邪気な姿勢と、幅広い音楽的嗜好を具現化できるそつのなさに最大の魅力を感じます。
さてこのアルバム、パワー・ステイション以降彼の得意技となったハードな面は鳴りをひそめ、全編ソウルフルな円熟のサウンドを聴くことができます。冒頭からグルーヴ感に満ちた「TRUE
LOVE」で幕を開け、とどめはマーヴィン・ゲイの名曲をカヴァーした「LET'S GET IT ON 98」。白人がこの曲を歌ってこの色気?!しかもあくまでクール。矛盾に満ちた奇跡的なヴォーカルです。
これからますますシブ〜いアルバムを出してくれることを期待していたのに、54歳で急逝してしまったのはホントに残念です。(合掌)
2003/09/28