スティーリー・ダンの6枚目のアルバム『彩』は、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人が、プロデューサーのゲイリー・カッツとともに、超一流のゲストミュージシャンたちを迎えて創り上げた、完成度の高い傑作です。
個々の楽曲単位でも完成度の高いポップな名曲が目白押しです。特にタイトル曲はゆったりと始まるバラードでありながら、間奏でスティーヴ・ガッドのドラムソロが入ると印象は一変し、とてもスリリングで最高です。また、3曲目の「DEACON
BLUES」をはじめハードボイルドな歌詞のセンスも特筆すべきものがあります。
当時の他のAORやフュージョンのように心地良く聴き流していたつもりが、いつの間にかそのこだわりのサウンドの虜となり、ある種の緊張感を強いられながら聴き込んでしまっているかもしれません。いや、逆にこれだけ緊張感の高いサウンドでありながら、おしゃれに聴き流すことも可能であるところがスゴいのでしょうか?
プリファブ・スプラウトやダニー・ウィルソンのようなフォロワーと思しきグループのサウンドは、クールなようでいてそこはかとなく人間的な暖かみが感じられ、それが魅力ともなっていますが、本家の音は違います。あまりにも洗練され過ぎており、病的にクールで人間味が感じられません。しかしダンの場合はそれが最大の魅力なのです。
2002/05/29