本人の顔が溶けていく不気味なジャケットから『MELT』とも呼ばれている、ピーター・ゲイブリエル3枚目のアルバムです。そのおどろおどろしいジャケットデザインは決してこけおどしではありません。ここにおいて彼はついにソロアーティストとしてとんでもない領域に踏み込んだと言えるでしょう。
元同僚のフィル・コリンズをはじめ、ロバート・フリップ、ケイト・ブッシュといったその筋の人種から、ジャムのポール・ウェラー、XTCのデイヴ・グレゴリーらパンク、ニューウェイヴ勢まで多彩なゲストを迎えて、研ぎ澄まされたとてつもなく先鋭的なサウンドを創り上げています。冒頭の「侵入者」のイントロのドラムからしてあまりにも斬新。フィルが叩いたこのドラムの音色は後にゲイトリヴァーブと呼ばれて80年代に大流行し、プロデューサーのスティーヴ・リリィホワイトやエンジニアのヒュー・パジャムらの名を一躍高めることにもなりました。
ともかくアルバム全編を通して次から次へと繰り出されるエキセントリックな鬼気迫るサウンドと唯一無二のヴォーカルを聴いていると、真の意味でプログレッシヴな天才ぶりに圧倒されます。元ジェネシスの中心人物がジェネシスを超えた瞬間。
2004/12/05