ビー・バップ・デラックス〜レッド・ノイズを経て地道にソロ活動を続けている近未来SFサウンドの第一人者ビル・ネルソンは何枚かのインストゥルメンタルアルバムを出した後、自身の音楽的ルーツであるロックオリエンテッドなギターバンドへの回帰を思い立ちました。そのバンド編成はなぜか2人のドラマーと4人のギタリストという構想だったとのこと。それに向けて曲作りを始めていた彼でしたが、諸般の事情によりバンドの計画が頓挫、その結果彼一人で創り上げたデモをまとめたものがこのアルバムだそうです。
バンドがぽしゃったことがどう影響したかは判りませんが、このアルバムのデキ自体は文句なしです。いかにも彼らしい屈折したギターとシンセのフレーズが満載のクールな近未来派ポップが全編に渡って繰り広げられます。特に3曲目の「SPINNIN'
AROUND」あたりは、決して声を張らない彼の脱力ヴォーカルと独特の浮遊感を持つサウンドが相まった佳曲です。
しかしこの人、パンクのムーヴメントが興る前からニューウェイヴの先鞭をつけてしまったのが早過ぎて、ポップ史上における位置がイマイチ曖昧な感じです。そのせいかソロ作はほとんど国内盤が出ておらず、ディスコグラフィもまともに把握できないのが残念。
2003/02/05