TONY BANKS / A CURIOUS FEELING

(1979)

 ジェネシスが3人になってからというもの、メンバーのソロ活動も徐々に活発になっていきますが、これはキーボード奏者トニー・バンクスの1stソロアルバムです。
 常にジェネシスサウンドの核となる部分を担っている彼だけあって、メンバーのソロの中でも最もジェネシス色が強い内容となっています。それは、ドラムを除いたすべてのパートを彼が弾いており、ドラムもジェネシスのツアーメンバーであるチェスター・トンプソンが叩いているのだから当然の結果と言えるでしょう。具体的にはこの前年に出た『そして3人が残った』に最も近い印象を受けますが、ポップ化を図った本家のそれよりもよっぽど叙情的な瞬間が随所で感じられ、そういった点では前々作『静寂の嵐』的な雰囲気も充分残しています。
 冒頭のエレピ(CP80)が聞こえた瞬間から「あ、トニーだ!」と分かる1曲目は、「FROM THE UNDERTOW」というタイトルの通り『そして3人が残った』の2曲目「UNDERTOW」の旋律を発展させたインストゥルメンタルナンバーで、寄せては返す波のような曲調からストレイトにつけられた「波」という邦題が秀逸。白眉はアナログ盤B面3曲目の「忘れな川」。これまたインストゥルメンタルで、思いっきり中期ジェネシスの世界です。
 ついインストゥルメンタル曲にばかり言及してしまいましたが、ヴォーカルで参加したストリング・ドリヴン・シングのキム・ビーコンも、まぁまぁ健闘していると思います。

2004/12/22


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