[資料6−6  声    明


 本日、水戸地方裁判所土浦支部は、えん罪「布川事件」について、再審開始決定を下した。私たちは、逮捕以来38年にわたって無実を叫び続けてきた桜井昌司さん、杉山卓男さんの願いに裁判所が初めて応えてくれたものとして、この決定を心から歓迎するものである。同時に、確定判決の誤りを厳しく断罪した裁判官の良心に深く敬意を表するとともに、失いかけた司法に対する国民の信頼を回復させるものとして高く評価したい。

 布川事件は、もともと犯人とされたふたりと結びつく物的証拠が何ひとつない中で、ふたりの「自白」と、あいまいな「目撃証言」のみで有罪とされた典型的なえん罪事件である。その「自白」も、別件逮捕に始まり、アリバイの否定、死刑の脅しなど、代用監獄における警察の誘導、偽計(ぎけい)、脅迫(きょうはく)によって作られたものであり、矛盾と変遷(へんせん)に満ちたものであった。しかし、確定審は「犯人でなければ自白しない」という予断と「指紋がないからといって犯人でないとは言えない」などという奇妙な理屈で無期懲役刑を課し、ふたりは29年もの獄中生活を強いられたのである。

 今回の第2次再審請求の審理の中では、こうした「自白」や「目撃証言」の矛盾が、新証拠や事実調べにより一層明らかになった。とりわけ、殺害方法や虚偽工作とされたガラス戸の破損など事件の核心部分において、「自白」と物的証拠や科学的実験結果が決定的に相違するなど、その任意性、信用性はことごとく覆(くつがえ)された。

 また、検察庁は「死体検案書」や「毛髪鑑定書」、真犯人につながるかも知れない目撃証言などの重要な証拠をこの37年間隠し続けてきた。これらの証拠が一審から開示されていれば誤判はあり得なかったであろう。その証拠隠しだけでも裁判のやり直しに値するものであった。「布川事件」は、「えん罪」というよりも、こうした警察・検察の不正義と、これに欺かれた裁判所によって生み出された「捏罪(ねつざい)」事件なのである。

 従って、検察庁は、本事件における警察・検察側の対応を厳しく反省し、裁判所の決定に従って速やかに再審に応じることを強く求める。道理のない即時抗告などは自ら非に非を重ねるものであって、到底許されない。

 私たち「守る会」は、これまで15回に及ぶ全国現地調査をはじめ無数の学習会を行って事件の真実を学び、ふたりの無実を確信して「無実の者を無罪に」する支援活動を続けてきた。第2次再審請求後は、毎月欠かさず裁判所要請をし、全国から10万名を超える署名や要請はがきを提出し、全国各地で支援コンサートや講演会、演劇、映画、美術展、絵手紙展など様々な活動を通じてふたりの再審開始決定を求めてきた。

 今回の裁判所の決定は、当事者と弁護団、そして全国の支援運動がひとつになり、長い年月をかけてたたかい続け、勝ち取った成果である。しかし、ふたりにとっては奪われた人権を回復するための第一歩を踏み出したにすぎず、再審により早急に完全無罪の判決を勝ち取らなければならない。

 私たちは、その日まで引き続き全力をあげてふたりの支援活動を続けていくものである。

      2005年9月21日

             国民救援会中央本部
             再審・えん罪事件全国連絡会
             布川事件桜井昌司さん杉山卓男さんを守る会

next back


Home Profile Problem History Action News