[資料6−5] 再審開始に関する弁護団声明
本日、水戸地方裁判所土浦支部刑事部は再審請求人桜井昌司氏、同杉山卓男氏に係る再審請求事件、いわゆる「布川事件」について、再審を開始する旨の決定を下した。
これは、裁判所が白紙の立場で確定判決を直視し、その誤りを率直に認めたものであって、高く評価することができる。同決定は、犯行と請求人らを結びつける物証は皆無で、犯行に近接した時間帯に請求人両名を布川付近で見たとのあいまいな目撃証言の他には、矛盾・変遷に満ちた請求人らの自白のみしか存在しないという、本件の脆弱(ぜいじゃく)な証拠構造を正しく分析し、科学的に裏付けられた多数の新証拠とともに総合評価した上で、確定判決の有罪認定に合理的疑いが生じたことを明確に指摘した。弁護団は、この決定が、今後の再審の流れの中で極めて重要なものであり、今なお、ねばり強く続けられている多くの再審事件の関係者に大きな勇気を与えるものであると確信している。
また、今回の再審請求審においては、相当数の未提出証拠が37年ぶりに開示され、開始決定の有力な証拠とされた。真相を究明し無辜(むこ)の救済を図るためには、証拠開示が決定的に重要であることが明らかになったと言える。
一方で、この決定を得るまでに、請求人両名が自己の無実を晴らすべく、長い歳月にわたって筆舌に尽くしがたい努力を続けてきたことを我々は忘れてはならない。我々は、この事件から、国家権力を行使する立場にある者の予断と偏見が恐ろしい結果を招くことを学び、このような冤罪(えんざい)が2度と繰り返されないよう、捜査当局及び裁判所に強く要望する。なお、公益の代表者たる検察官は、即時抗告を断念し、本日の決定を尊重し、すみやかに本件を再審公判手続に移行するよう決断されることを強く訴える。
最後に、弁護団は、請求人両名が完全無罪判決を勝ち取るまで、今後も全力をあげて弁護を続けることをここに表明する。