ポール・ブレイディは地元アイルランドではかなり芸歴のある人で、元々知る人ぞ知るアイリッシュフォークの重鎮ですが、あまりそういったトラディショナルなスタイルにはこだわらず、常に独自の世界を描き続ける孤高のシンガーソングライターです。
もしかしたら本人の意志ではなかったのかもしれませんが、スティーリー・ダンを手がけたゲーリー・カッツをプロデューサーに据え、トトのジェフ・ポーカロといった一流のセッションミュージシャンをバックにA.O.R.路線に走った『ロマンティック・ダンディ』等、アコースティックな路線から離れ、しっかりとアレンジされたサウンドスタイルを確立したかに見えました。
ところが、ドキュメンタリー映像用のスタジオライヴアルバム『THE PAUL BRADY SONG BOOK』を出したあたりから強烈な揺り戻しがあり、その次作にあたるこのアルバムは非常にオーガニックなアプローチをとっています。
冒頭の「SMILE」をはじめとして、ごくシンプルな演奏をバックに、とてつもなく存在感のある彼の声がしみじみとしたメロディにのって胸を打ちます。
ただし、こういった大人の歌をじっくりと聴かせるベテランにも関わらず癇癪持ちで、リハーサル等でバックのメンバーを怒鳴り飛ばしたりする時の形相は相当怖いらしいです。大人と言っても、一昔前のカミナリオヤジキャラ?
2007/09/01