PETER GABRIEL / SAME (IV)

(1982)

 ピーター・ゲイブリエルが当時ユングの著作にハマっていたことから『アフリカのユング』という仮題をつけていたものの、結局またまた本人の名前をそのままタイトルとした4枚目のアルバムです。アメリカのゲフィンは、紛らわしいから(?)便宜上『SECURITY』というタイトルをステッカーで貼って出したそうですね。
 前作のラストに収録されていた人種問題を扱った名曲「BIKO」において既にアフリカ的なリズムを導入していましたが、その後彼は民族音楽の祭典‘WOMAD’というイヴェントまで主催しました。さらに、前後して出たこのアルバムではそれを随所で取り入れています。冒頭の「THE RYTHM OF THE HEAT」からとにかくリズムが強烈。当時最新のテクノロジーであったリンドラムという機材の人工的なビートを大胆に導入しながら、曲によってエコメ・ダンス・カンパニーという現地のパーカッション隊を効果的に絡めて圧倒的な迫力を出しています。シングルカットされヒットした「SHOCK THE MONKEY」のように、ポップな曲も単なるポップでは終わらず、独特の声質と相まって鬼気迫るものがあります。もっとも彼自身はこの曲を典型的なモータウンサウンドと言っており、そういったハズシ具合もまた天才だからこそなせる技。要するに何かへのオマージュとしてやっても、できあがったものはオリジナリティに溢れてしまうわけです。
 ちなみにこのアルバムは前作同様全曲ドイツ語ヴァージョンもあり、よりスゴ味があります。なぜか曲順違い。

2000/09/09


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