THE CARS / PANORAMA

(1980)

 ボストン出身の5人組、カーズの3枚目のアルバムです。デビュー当時から解散まで、一定水準のカーズ流ロックンロールを聴かせてくれた彼らですが、その中にあってこのアルバムは、もっともアーティスティックな側面が強調された作品です。
 全体的なノリはもっぱらタイトで、ごきげんなサウンドなんですが、根底にあるクールな感覚がなんとも言えない魅力となっています。それはもちろん中心人物のリック・オケイセック個人のキャラクターだけによるものでなく、例えばエリオット・イーストンの実は上手いのに抑制の効いたギターや、やたらチープな音色を選ぶグレッグ・ホースのキーボード、さらにはロイ・トーマス・ベイカーのプロデュースといった様々な要素が入り交じった結果なのです。例えばシングルヒットした名曲「TOUCH AND GO」のつんのめりそうなリズムとスカスカなキーボードのイントロを聴いた瞬間に味わえる不思議な感覚が、このアルバムの魅力を如実に表しています。こういったセンスを持ったバンドってアメリカでは他にほとんど見当たらないですよね。
 ところで、リックの素っ頓狂なヴォーカルとベン・オールのフツーっぽいヴォーカルの対比が、ちょうどユートピアトッドとカシムみたいで良かったんですが…、残念ながらベンが何年か前に他界してしまいました。気付いたときは末期癌だったそうです。(泣)

2003/09/08


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