プログレッシヴロック系のアーティストにはカリスマと呼ばれる人が少なくありませんが、ロバート・ワイアットはその中でも飛び抜けて孤高のカリスマ性を発揮しており、もはや一ミュージシャンと言うより重要無形文化財のような存在です。
この人がこのような地位を築くに至ったのは、皮肉にも悪夢の落下事故が原因です。友人の誕生パーティーで泥酔して4階から落下した彼は背骨を骨折、以来車椅子の生活を余儀なくされています。ソフト・マシーン在籍時からドラマーとしてならした彼ですが、この事故を境に作風はおろか性格も一変し、別世界に突入してしまった感があります。
この5thアルバムはキーボード主体のスカスカなサウンドでありながら、彼の高音でハスキーな歌声はいつものように神々しく響き渡るため、崇高さや寂寥感は相変わらずです。
また、アルバムには未収録のものが多いんですが、この人が取り上げた他人の曲はどれも本人ヴァージョンを凌駕してしまうすさまじいものばかりで、特に「SHIPBUILDING」は出色のデキです。コステロヴァージョン自体充分激シブなのに、それを上回る超激シブ。
2002/07/29