ベン・ワットがトレイシー・ソーンと組んでエヴリシング・バット・ザ・ガールでの活動を始める前にチェリーレッドから出した唯一のソロアルバムです。
パンクのムーヴメント以降様々な形体の音楽がシーンに登場しましたが、その中でもこの人はネオアコの文脈で語られることが多く、そこはかとなくボサノヴァ風味の弾き語りは一聴したところ清涼感に溢れた印象を受けるかもしれません。ところが曲調はゆるいくせに実はほろ苦い青春の1ページでは済まされない悲痛な叫びだったりして、聴けば聴くほど落ち込んでいくような奈落モード全開、内向的にもほどがあるだろうと言いたくなる切なさMAXのサウンドです。
特に4曲目「EMPTY BOTTLES」から次のタイトル曲へと続く流れは、さながらパンクの嵐が吹き荒れた後の荒野に吹く、肌を刺すような寒風のイメージで、粒子の粗いモノクロ映像が似合いそう。そこがたまらない魅力で、一度はまると抜けられません。
こういった世界をナチュラルに醸し出せるアーティストとして真っ先に思い出されるのがロバート・ワイアットですが、実際ベンはこのアルバムの前にロバートと一緒に『SUMMER INTO WINTER』というEPを出しており、現在のCDではその音源もカップリングされていて重宝です。
2007/12/31