アンダーソン・ブラフォード・ウェイクマン・ハウの唯一のアルバム、『閃光』です。
80年代以降、解散〜再結成とかまびすしかったプログレ界で、ひときわ離合集散ぶりが激しかったイエス。そのイエスのキャリアの中で最大のお家騒動がこの時期でしょう。「イエス」という名義を巡って元メンバーが対立し、最盛期のメンバー5人のうち4人がいるにも関わらず、イエス名義で出せなかったこの作品は、トレヴァー・ラビン主体の本家(?)イエスよりもよっぽどイエス節炸裂です。それもそのハズ、誇り高きイエスのハート&ソウルであるジョン・アンダーソンが、本家に対する腹いせとばかり全力投球し,、桃源郷を希求する本来のイエスサウンドの神髄はむしろこのアルバムにあります。新生‘90125’イエスに参加しなかった他のメンバーもスゴいスタンスで自己主張しており、描き出される世界は楽園的でありながら、それなりに緊張感溢れるサウンドになっている点で、二律背反の共存が奇跡的に達せられています。
冒頭の「THEMES」からわくわくするような展開を見せますが、注目は3曲目の「BROTER
OF MINE」。10分を超える長尺もので、確かなテクニックに裏打ちされた目まぐるしい展開を見せながら、本質である明るいポップさが全開。そして何よりジョンの声の存在感が往年のファンにはたまりません。
ただこの後いけしゃしゃあ本家と仲直りして合体、8人編成で寄せ集めのアルバムを出し、ツアーまで回ったのはいただけません。
2004/10/01