YES / CLOSE TO THE EDGE

(1972)

 プログレッシヴロックというジャンルに限定して考えると、イエスはまさしく基本中の基本であり、一つの指標です。特にその最高傑作と言われる『危機』にはプログレのすべてがつまっています。壮大な構想、長大な楽曲、超絶なテクニックなど、どこを取っても、これぞプログレです。
 さて、そんなプログレのプロトタイプのようなこのアルバムですが、もちろんイエスならではの魅力も満載。リーダーでヴォーカルのジョン・アンダーソンの声と、彼の持ち前の脳天気なキャラクターが、そのままこのバンドの方向性を決定づけています。そのため、このアルバムに収められた3曲はいずれも長尺ものであるにもかかわらず明るくポップな印象を受けます。メンバー全員がそれぞれすごい個性の持ち主であることを考えると、このジョンの無自覚の統率力は驚くべきことです。自意識過剰な凄腕のメンバーたちが、誇大妄想的なジョンに振り回されながら、最大限自分を出そうとした結果、こんな緊張感溢れる名盤が誕生したんだろうと思います。
 とはいえ、この後何度となく繰り広げられるバンドの離合集散ぶりも、他ならぬジョンのせいなんでしょうね。

2000/12/14


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