スミスは80年代にマンチェスターから登場し、多くのイギリスの若者の心を掴みながら、あっけなくその歴史に幕を下ろした、実にはかないバンドです。これは彼らがインディペンデントレーベル、ラフトレードに残した最後のオリジナルスタジオアルバムで、このとき既に大手EMIへの移籍が決まっていました。でも、ギタリスト兼コンポーザーのジョニー・マーの突然の脱退によってスミスは封印されてしまったのです。
青春は「ほろ苦い」とか「甘酸っぱい」と形容されることがありますが、モリッシーの描き出す青春はそんなメランコリックなものではなく、自虐的で屈折しています。ここで彼が非凡なのは、その悲惨さを独特のユーモアで処理してしまう点。自らピエロを演じる痛々しさが彼のキャラにハマってリアルでした。そしてそれは奇しくもマーの裏切りともとれる脱退によって、より完璧なものとなったのです。
このアルバムは前作までよりもアレンジ面で凝っているため、各曲のポップソングとしての完成度は高まっているんですが、逆にそれが空しく響き、切なさを助長します。シングルとなった「GIRLFRIEND
IN A COMA」のようにかわいらしい曲調からは想像できないような重い曲があるかと思えば、「UNHAPPY
BIRTHDAY」のように分かりやすく屈折した曲もあり、ヴァラエティに富んでいますが、結局はひたすら切ないです。
でもモリッシー、この後当分精神的ショックから立ち直れないかと思ったら、案外すんなりソロアルバムを出しました。
2003/07/25