ウルトラヴォックスの3rdアルバムにして、ジョン・フォックス在籍時の最後のアルバム。ジャケットに並んだ5枚の写真がジョンの美意識を象徴的に表した傑作です。
ここで聴かれるエレクトロニクスにソリッドなギターを絡めてヨーロッパ風の耽美的な世界を描き出す手法は、後にジョンのソロアルバム『THE GARDEN』において完成されますが、このアルバムはさしずめその原石といった趣。それだけに荒削りではありますが、逆にそれがスリリングで、何度聴いても色褪せない斬新さがあります。パンクからニューウェイヴが派生していく前夜のシーンを反映している点も含めて、数あるニューウェイヴの名作の中でも最重要作と言えるでしょう。
混沌とした中から何か新しい物が生み出されるような予感を感じさせるイントロで始まる1曲目「SLOW MOTION」から、疾走感溢れる2曲目以降のソリッドかつタイトな展開を評するには、「かっこイイ!」という一言で充分です。後に彼の代名詞となる‘クワイエットマン’の元になった「QUIET
MEN」や静寂の中に消えていくラスト「JUST FOR A MOMENT」もたまりません。
しかし、これほどの傑作でありながら、あまりにも時代を先取りし過ぎていたためか成功とはほど遠い結果で、ジョンは本作をもって脱退。ウルトラヴォックスも一時期開店休業状態に陥ってしまいます。とう言うわけで、名盤の認定を受けるのは後年。
2001/02/12