ピーター・ゲイブリエルが脱退してしまったジェネシスですが4人体制となって短期間に2枚の充実したスタジオ盤を発表しました。そしてこの『幻惑のスーパーライヴ』という2枚組はその時期のバンドの活動を総括する貴重な記録です。
ピーターというワンアンドオンリーの存在がいるとどうしてもその存在感が際だってしまうため、他のメンバーがいかにスゴい演奏を繰り広げようとも彼らにスポットが当たることはほとんどありませんでした。そういった意味ではバランスを欠いていたと言えます。逆にこの時期のジェネシスは、アンサンブルの点で数段バランスよくまとまっています。それは各メンバーのテクニックの向上ももちろんあるでしょうが、ピーターの脱退によってギクシャクした緊張感が消えたことが大きいと思います。
4人になってからの曲の完成度はもちろんですが、ピーター在籍時の曲もフィルのヴォーカリストとしての健闘によって新たな魅力を獲得しています。例えば「THE
CARPET CRAWL」なんて本来美しくも不気味な曲だったハズなんですが、フィルが歌うとメロディの良さが前面に出てくるから不思議。つまり同じ曲でもエキセントリックさがソフィスティケイトされた形に変換されて提示されているのです。それって二人の資質の違いなので、どっちが好きかってことは別の問題ですが…。
2004/12/06