ライヴアルバムを挟んで5枚目のオリジナルスタジオアルバム『月影の騎士』はジェネシスをグループとして捕らえた場合、最もバランスのとれた傑作です。
メンバー各人の技術の向上に加えて、録音技術も明らかに向上しており、それまでのアルバムに比べると演奏はより端正にまとまり、音質までクリアーになっている点が大いにプラス要素となっています。そのため収録された個々の楽曲も完成度が高いものばかりです。例えば2曲目「I
KNOW WHAT I LIKE」はコンパクトにまとめられた英国臭いポップで、シングルヒットしています。続く名曲「FIRTH
OF FIFTH」は、イントロのトニー・バンクスのピアノといい、間奏のスティーヴ・ハケットのギターソロといい、すべてが有機的に機能しており、そのすばらしさは筆舌に尽くしがたいものがあります。さらに、「THE
CINEMA SHOW」後半のインストゥルメンタルパートの一糸乱れぬ演奏も見事です。
ピーター・ゲイブリエルという突出した個性の発現の度合いは次作に譲りますが、グループ表現としては最も完成度が高く、バンド的には最高傑作と言っても差し支えないと思います。
2002/09/24