アンソニー・フィリップスがリチャード・スコットなる人物と組んだアンソニー・フィリップス・バンド唯一のアルバムです。CD化に際してジャケットデザインや曲順が変更になり、曲数も増えています。
アンソニーの資質からすると、こういったポップな内容のアルバムを出すことは極めて異例のことですが、案の定本人の意向ではなく当時レコード会社に背中を押されて作ったようです。だからと言っておざなりのやっつけ仕事かと言うとまったくそんなことはなく、端正に作り込まれたなかなかの佳作となっているところに彼の生真面目さが感じられます。
演奏はリズム以外ほとんどアンソニーが一人で手がけていますが、アレンジ面でチープながらも曲ごとに工夫を凝らし、単調になることを防いでいます。例えば冒頭の「GOLDEN
BODIES」のイントロでは、いかにも当時のニューウェイヴ的なリズムマシーン(808)を用いながら、すぐにウィングスの「あの娘におせっかい」を彷彿とさせる雰囲気に持っていくあたり努力賞ものです。
彼のようにヒットチャートに背を向けたような音楽活動を行なっているアーティストがわざわざこんな内容のアルバムを出すということは、当然ヒットを狙ったのでしょうが、あまりにも地味なキャラのためブレイクするハズもありませんでした。
2004/12/04