PHIL COLLINS / HELLO, I MUST BE GOING !

(1982)

 順調にソロのキャリアをスタートさせたフィル・コリンズの2枚目のソロアルバム『心の扉』です。
 一曲一曲まったく違ったタイプの曲が雑然と並ぶ様はヴァラエティに富んでいるというのを通り越して散漫な印象で、アルバムとしての統一感はありませんが、フィルという一アーティストがジェネシスという枠をとっぱらって様々な可能性を試した結果と考えればアリでしょう。中でも最も大胆な挑戦はシュープリームスのカヴァー「恋はあせらず」。「あの英国を代表するプログレバンドのドラマーが?!」という周囲の驚きをよそに、この曲はシングルカットされて大ヒットし、フィルのソロアーティストとしての地位を確固たるものにしました。なんでも、バンドに在籍中のメンバーのソロの方が本家よりも先にチャートの1位になってしまうというのは初めてのことだったそうな。
 また、ソロ前作で試み、本家のアルバムにまでムリヤリ導入してしまったホーン隊もここに至ってすっかりなじみ、サウンド面でもフィルの独自性が確立した感があります。でも個人的にはやっぱりジェネシスっぽい1stシングル「この壁の向こうに」の方に惹かれますが…。
 いずれにしても、このアルバムを足がかりにその後本家ジェネシスまで大成功を収め、本人は本人で「世界で最も忙しい男」と呼ばれるようになるわけですから、とんだ名盤と言わざるをえません。

2005/1/10


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