カナダを代表するバンド、ラッシュがハードロック〜プログレ時代を経て、非常にソリッドかつポップな方向性を打ち出したアルバムです。
ラッシュと言えば常にメンバー各人の超絶なテクニックについて語られますが、ポップな路線のこのアルバムにおいてもそれは変わりません。むしろ複雑な展開を見せていた大作主義の時代よりも、曲がコンパクトにまとまっている分、凝縮されて披露されるテクニックが圧倒的にスリリングです。タイトにキメているフリして要所要所で手数の多いニール・パートのドラムや、歌いながらめちゃめちゃ弾きまくるゲディ・リーのベースは神業です。さらにアレックス・ライフソンのギターのあまりにもシャープな音色はこのアルバム全体のトーンを決定づけています。特に3曲目「RED
SECTOR A」のイントロでは、空間を切り裂きながら空間を作り出すという離れ業をやってのけます。
この時期のラッシュは編成だけでなく上述の音色などから意外にポリスに近いものを感じることもありますが、実際は似て非なるものです。確信犯的に大人っぽく抑制をきかせているのがポリスなら、大人げなく過剰に演ってしまうのがラッシュなのです。似ているどころかまったく逆!このトゥーマッチな感覚こそラッシュの真骨頂と言えるでしょう。
2002/10/15