シュープリームスのカヴァー「恋はあせらず」によってフィル・コリンズが全米でブレイクした後、満を持して出た本家ジェネシスのアルバムです。バンド名をそのままアルバムタイトルに冠したことから、彼らの並々ならぬ意気込みが感じられます。
ここでジェネシスは、誇り高きブリティッシュプログレッシヴロックの今日的展開をポップのフィールドにおいて、テクニックをひけらかすわけでもアレンジに凝るわけでもなく、独自の手法で確立してしまっています。シンセドラムの導入によってこれまでにない重厚なサウンドを獲得していますが、魅力の本質はあくまで陰影に富んだ独特のメロディラインとあり得ない展開の妙にあります。それを決定づけているのが先行シングルとなった冒頭の「MAMA」。リズムマシーンに導かれて不気味なシンセ音が漂い淡々と始まるものの、中程で「HA
HA」というかけ声とともに耳をつんざくような音量のドラムパターンが炸裂、フィルのブッ叩きまくり、叫びまくり状態に突入します。そんな曲なのにイギリスで発売と同時にチャートトップとは本国での彼らの人気の程が伺えます。一方それがアメリカでは大ハズレだったものの、2ndシングルとなった比較的地味目の佳曲「THAT'S
ALL」がなぜか今度はアメリカでもヒット、それをきっかけにメンバーのソロ作まで次々とヒットしました。こんなバンドは他にいません。強いて挙げれば、ビートルズくらいかな。
2003/07/01