GENESIS / A TRICK OF THE TAIL

(1976)
 

 ジェネシスがフロントマンのピーター・ゲイブリエル脱退という危機を乗り越えて放った、まさに起死回生のアルバムです。
 ピーターというあまりにも強烈な個性を持つ不世出のカリスマがバンド内で担っていた役割の大きさを考えれば、その代わりを務められる人物など到底いるわけもないので、他のメンバー達は途方に暮れてしまったようです。実際スティーヴ・ハケットはソロアルバムに着手し、フィル・コリンズもブランドXというプロジェクトを立ち上げていることから、まさにバンド存続の危機だったわけです。
 では、なぜこの作品が世に出たのか?それはトニー・バンクスの存在が大きいと思います。彼はピーターの突拍子もないコスプレには辟易していたふしがあり、常に注目を集めるヴォーカリストを尻目に、我こそはサウンド面での要であるという自負があったことは想像に難くありません。ピーターの脱退によって純粋に楽曲で勝負できる状態を得たトニーの意地がこの傑作を生んだというのは穿った見方かもしれませんが、当たらずとも遠からずと言えるでしょう。
 結果はオープニングの「DANCE ON A VOLCANO」を聴けば一目瞭然、全曲最高のデキです。「からまり」や「さざなみ」あたりに見られる叙情性は、あるいはピーター在籍時には出せなかった味かもしれませんね。解散しなくてホントに良かった。

2002/08/16


BACK