実にいいクルマだった。またいつか、乗るかもしれない。 ロードスターの感想は、これ以上でも以下でもない。 一旦適正化しようとは、前から思っていた。 適正化、とは、いわゆる改造のことではなく、一般的なクルマに躯のモノサシを合わせることである。 アルファロメオ145Q、NB8Cロードスター1800RSと乗り継いできて、すっかり一般的なクルマの尺度を忘れてしまっていた。 アルファロメオの時は、メンテナンスや維持費の金銭感覚が麻痺した。 ロードスターに乗り換え、金銭感覚は戻った(とは言えロドスタ自体他のクルマと比較しても高価なクルマだ)ものの、今度は走行性能に対する要求が厳しくなった。 元々ロードスターに乗ることになったのは、一つはアルファロメオ145Qの度重なる不調にあった。 維持費に関しては一般的な国産車のおよそ3〜5倍かかり、メンテナンスには100キロ離れたディーラへ持ち込む必要があり、毎年必ずどこかが壊れた。 現代的設備で作られたクルマとは言え、まだ当時の国産車の品質水準には至っていなかったのである。最近の状況は知らない。良く売れてるところを見ると、品質は上がっているのかも知れない。 しかし、イタ車はよく壊れる。これは身をもって体験したことだった。 二つ目の理由は、バイクに乗りたかった代わりにロードスターを買ったことである。 なぜ当時バイク免許を持っていながら乗らなかったのか不思議だが、オープンエアーを満喫でき、かつ、小型でスポーティなクルマというと、当時はMR-Sとロードスターしかなかった。 ホンダのS2000は、軽快さに関し難点が残った。高剛性のボディをもってしてオープンと走行性能の両立を図った点は評価に値するのだが、その分軽快さがオミットされたのである。これはホンダのクルマ造りの思想とワタクシの思想の違いだけの話であり、その一点において候補から除外された。 MR-Sは一度候補に上がった事もあった。 しかし、デザイン的に1stカーにするには無理があった。容量の無いトランクは特に評価を下げた。 自動車誌では高い評価を得ていたMR-Sだが、敢えて言うと、おもちゃのようなクルマに見えてしまい、すぐに候補から消えた。 最終的にロードスターが残り、当時はロードスターに不満点が無かった(無視した)ため、ロードスターに決めた。 2名乗車、FR、軽量、スポーツ。運転していて実に楽しいクルマだった。 ボディ剛性は、屋根が無い分プアである。パワーは145馬力と慎ましい。デフに装着されたトルセンLSDは具合が良く、リアのスリップもコントローラブルだった。 なんと言うか、一般のクルマ好きでちょっと腕に自身がある人間が自由に振り回せるクルマだった。 しかし、運動性能と快適性は相反する。 実際客観的に見ると、乗り心地は悪い。エンジンはピックアップが良すぎて、ラフに扱うと同乗者の不評を招いた。 遮音性は皆無で、高速ではオーディオのボリュームを上げても聞こえ難い。カーナビの音声案内も聞こえない。助手席に乗る友人との会話すら聞こえ難いのである。 またシートが悪くホールド性が悪い。ロドスタ乗りがシートを替えてる理由はここに尽きるのではなかろうか。 2004年夏に、バイクを購入したのも買い換えの一因になった。 先に述べた通り、バイクとクルマの良いとこ取り? な感じでロドスタを購入したので、バイクに乗ることになった以上、ロドスタに乗る理由は薄くなった。 また、比較的長距離長時間乗ることが多く、長距離走行ではかなり辛いと言うのも買い替えの理由にあがる。 そこで、ついに買い替えを考え始めた。2004年の8月半ば頃である。 考え始めてしまえば、その後の行動は素早い。 個人的趣味であるが、ホットハッチバック車が好きなワタクシである。 外車にもハッチバックはあるが、アルファロメオで懲りているので当分乗る気は無い。 国産で同クラス帯で……、と探していき、マツダのアクセラが最終的に候補に上がった。 他メーカでは残念ながら、趣味と合致する候補は上がらなかった。 趣味、と言う事で、実はデザインで決めた部分も大きい。アクセラのリアを斜め後ろから見たときのスタイルは、他のクルマには全く無い魅力的なデザインである。国産車はフロントや室内デザインに力を注ぎすぎてるのか、リアのデザインが結構テキトウな感がある。マツダはその辺の作りこみも、上手い。 リアのデザインと言えば、一瞬「プジョー…」と心の声がささやいたが、無視した。 適正化と言いながら、やっぱりスポーティなクルマを選ぶのもどうかと思うが、少なくともロドスタのような特殊さは持ち合わせておらず、一般的な範囲でのスポーティさである、との判断から、アクセラを候補に上げたのである。 RX-8と言う声もあったが、これはファミリーカーの皮をかぶったスポーツカー(GTカー?)だ。 ロータリー独特の乗り味も捨てがたいが、適正化というよりは、よりのめり込んじゃう方向になってしまうので、却下された。 2004年9月中頃にディーラへ赴き、実車を見せてもらい、試乗させてもらった。 試乗したクルマは、2000ccのATである。 重量が200キロほどロドスタより増している影響か、足回りが乗り心地重視なのか、乗り味はマイルドである。ロドスタのように路面のデコボコを素直に車体に伝えてユサユサと揺さぶるような事も無い。すこぶる快適である。 交差点を通常の速度で曲がってみた。 脚は意外にしっかりとしている。具体的には、ロールはする、でもあるところで踏ん張る感じがある。グにゃっとだらしないロールはしない。 加速に関してはATっぽく加速していた。ロドスタのようなダイレクト感、エンジンが回る分だけ加速していくと言う感じは無い。 というか、ロドスタと比べる時点で間違ってはいるのだが。 同乗者としては急激な加速感が無くむしろ安心感を得るだろう。 少し速い速度で曲がってみた。横に営業が乗っているので、一応常識の範囲内で、だが。 やはりロールはする。でもリアの踏ん張りが感じられた。面白い。乗り味はFFだがリアがこれだけしっかりしてると、意外に面白い。 ハンドリングは軽く、多少のアンダーがあるがアルファロメオの時よりはいい。 ロドスタに乗ってる間に、クルマってものも進歩したものだと、変な感心をしながら試乗を終えた。 結局、この日に契約してしまった。 ロドスタより1ランク価格で落ちるクルマだが、ロドスタが特殊なだけで、同クラス的価格帯では割と上位の価格である。 内装も値段相応以上と言うべきか。 シートが殊のほか良かった。堅く、ホールド性も高い。 シートは柔らかいほうが座り心地よいのでは? と思うだろうが、それは動かない室内での話であり、クルマの場合やや堅めの方が着座位置がずれ難く、またシートバックも堅いため骨盤が寝にくく腰痛にも効果が高い。 クルマのシートは立てて乗るのが基本である。背筋を伸ばした形でシートに深く座ると、骨盤もそれに応じて垂直に近くなる。 クルマに乗っていて腰痛を感じる場合の大半が、着座点が前に動き骨盤が寝た状態になって周囲の筋肉などが悲鳴をあげるために起こる。 また立てて乗ることによりシートベルトの効果も100%発揮するのだが、今は別にシート談義でもなんでもないので、詳しくはググるよう。 ちなみに、腕を伸ばしきってハンドル握ってる御仁も、国産高額車でよく見かけるが、シート位置が遠すぎるかシートバックが寝すぎである。自分の手足の長さを今一度見つめなおす勇気が欲しい。 シートの調整は、上下、前後、シートバック角度調整の3通り。必要にして十分。 またハンドルも調整式で、上下方向はおろか前後方向すら調整してしまう。 センタコンソールは、相変わらずDINの無いデザインで、社外品オーディオなどは取り付けが難しい。 試乗車のエンジンをかけると、センタコンソールにある液晶窓に「Welcome」と表示された。なんてこと…。 メータは常時発光式である。フードが深いから暗いのだろうか。 ハンドル脇にある調整つまみで明るさが調整できる。至れり尽せりだ。 ATのシフトゲートは見た目貧弱ながら案外剛性感がある。アクティブマチックのゲートでカコカコやっても不安は無い。 今回契約したタイプは、アクセラの5ドアハッチバックタイプで、「アクセラスポーツ」と呼ばれるタイプである。 またグレードは2300ccエンジンを搭載した23Sと言うタイプで、変速機は4AT(アクティブマチック)を選んだ。 欲を言えば5ATがあればよかったのだが。ラインナップには無い。同じ2300ccエンジンのアテンザにはあるんだから、あっても良さそうなもんだが。5ATつけるとコスト上がるのかな。 オプションとして、 DVDナビゲーション(HDDはディーラオプションで取り付け方にやや難があった) ディスチャージヘッドランプ S-パッケージ(レインセンサワイパー、オートライト、ウィンドウ撥水機能、スピーカ4→6、イモビライザー、のセット。正直微妙。) 6連装CDプレーヤ&MDLP対応MDプレーヤ(MP3プレーヤと6連装CDプレーヤはどちらか一方しか付かなかったため、6連装を選んだ) VICSユニット(ディーラオプション。DVDナビに標準で付けろよ…) DSC(横滑り防止機構)はサイドターンが出来なくなるので装着なし。 DVDナビはTVチューナが付くと言われて、要らない、と言ってもセットで付いて来た…。 今流行で話題騒然のETCは、「正直オートバックスなんかで付けた方が安い」と言われたので、納車後にタイヤ館でつける予定である。 契約時の話では、どうやらバックオーダーを抱えてるのか、来月生産のクルマになると言われた。出来たて作りたてのクルマが届けられるそうだ。 意外に売れてるらしい。それとも少量生産なのか? オーディオの音質に関しては、あまりよくないらしいという話を聞くが、少なくとも遮音してないロドスタよりもマシではないだろうか。 ATを選んだ理由は、今までマニュアル続きであり一度AT車を持ってみたかったことと、操作の簡便化にある。 それにハンドルは本来両手で操作して初めて100%の実力を発揮する。レースでも基本的に両手でハンドルを握っているのは一目瞭然だろう。 とにかく、これを機に一度クルマ道楽から離れてみるつもりである。 まぁ、ヘッダーに表示している通り、バイクとクルマ、両方とも気合入れないと乗れないクルマを所有するのも結構疲れるものである、と言うのが、正直なところの本当の本音であるのだが。 2004.10.16 |