V 銀の魚
しずかにしずかに
楠の木かげを漕ぎだした
川の男の
たくましい胸板。
あたらしい棹(さお)を入れる
川の女の
清らかなうなじ。
朝の川面に
投網がふくらむ。
さざなみが湧く。
さざなみがひろがる。
深い川の深い心の
いきのよい魚をとらえるのだ。
朝日にはねよ銀の魚。