混声合唱組曲
「富士山」
作詩 草野 心平 作曲 多田 武彦
U.作品第肆
川面(かわづら)に春の光はまぶしく溢れ
そよ風が吹けば光たちの鬼ごっこ
葦の葉のささやき
行行子(よしきり)は鳴く
行行子の舌にも春のひかり
土提(どてい)の下のうまごやしの原に
自分の顔は両掌(りょうて)のなかに
ふりそそぐ春の光に
却って(かえって)物憂く(ものうく)眺めてゐた
少女たちはうまごやしの花を摘んでは
巧みな手さばきで花環(はなわ)をつくる
それをなはにして縄跳びをする
花環が圓を描くとそのなかに
富士がはひる
その度に富士は近づき とほくに座る
耳には行行子
頬にはひかり
この曲は男声合唱組曲としてあまりにも有名ですが、混声合唱の
希望も多く、混声版として編曲されました。
男声合唱の水墨画から混声合唱の水彩画へ。