男声合唱組曲
父のいる庭
作詩 津村 信夫 作曲 多田 武彦
V 早 春
浅い春が
好きだった
死んだ父の
口癖の
そんな季節の
訪れが
私に
近頃では
早く来る
ひと月ばかり
早く来る
藪蔭から
椿の蕾が
さし覗く
私の膝に
女の赤児
爐の火が
とろとろ燃えている
山には
雪がまだ消えない
椿を剪(き)って
花瓶にさす
生暖かな−−−−
ああこれが「生」というものか・・・・・・・・・・
ふっと
私の頬に触れる
夕べの庭に
ゆう煙
私の性(さが)の拙さ(つたなさ)が
今日も
しきりと
思われる
(曲としては最初の歌詞にもどり「早く来る」で終わります)