童声(女声)合唱組曲
あめつちのうた
作詩 林 望  作曲 上田 真樹

2.樹のうた  

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おじいさんのおじいさんが
小さな若い樹を植えた
春が来て
樹は目を覚まし
空に向かって背伸びをすると
産毛のようにたおやかな
芽を吹き出した

おじいさんが
樹を見上げたとき
枝に白い花が咲き
やがて秋が来て
たわわに赤い実が生った
まるくて甘い実が生った

おとうさんが
斧を振り上げたのは
寒い冬が来て
薪にしようと思ったから
けれどもカーンと斧で打つと
銃は清(すが)やかに薫って
どうか伐(き)らないでと
涙を流した

わたしたちは、いま
大きな樹の下にいる
枝葉は青々と繁り
暑い夏が来ても
その深い枝影には
涼しい風が吹いている
樹は大きな腕を差し出して
この影に休んでくださいと
そよ風に歌った