輸入実務の概要


解説:有限会社ジャパントレードリンク(ホームページへ)代表取締役 小林公典


目次(内容)

供給先(輸出業者)の見つけ方

輸出業者の信用調査

輸入規制、制度、法的規制などの確認

引き合いの開始

インコタームズ

コスト計算

信用状(L/C)決済

信用状無しの荷為替手形決済

外貨送金

その他の決済方法

為替レート

貨物輸送

B/L(船荷証券)

海上保険

通関・貨物引き取り手続き

関税率・関税番号

契約書

供給先(輸出業者)の見つけ方

新たに商品を輸入しようとする場合、その商品を何処から買ったらよいか供給先を探す事から始まる。

供給先の探し方としては下記の方法がある。

a)  国内外の商品見本市で供給先を見つける

食品の場合毎年3月に日本で開催される国際食品展(FOODEX)には海外の食品供給業者が数多く出展しており効率よく供給先を探せる良いチャンスである。又外国の地域や国単位の小規模な展示会も良く開催されとおりこれらで供給先を把握することも出来る。海外でも各種商品別の見本市が開催されるのでこれらに参加するのも良い方法である。内外の見本市情報はジェトロで入手可能である。

b) ジェトロや外国の大使館の商務部などに問い合わせる

ジェトロは海外の業者の情報のみならず、海外や日本の売れ筋情報などの資料があるほか輸入手続きに就いての情報も入手する事が出来る。 ジェトロには東京本部(6階)および大阪本部に、豊富な国際ビジネス情報を提供するビジネス・ライブラリーを設けている。資料の有無については、下記に問い合わせ可能である。

情報サービス課    TEL 03-3582-5171

資料室        TEL 03-3582-5175

大阪本部ライブラリー TEL 06-6203-3605

c)  外国の大使館の商務部などの在外公館に問い合わせる。

在日公館は国によって違うが大使館などとは別に通商事務所をもうけておりかなり親切に相談に乗ってくれるところもある。又アメリカ、オーストラリアなどは州別の在日事務所を持っているし、中国は各商品分野毎の貿易公司や各省の在日事務所や在日法人がありこれらを経由して問い合わせることも出来る。なお中国の貿易公司や在日事務所の住所、電話・ファックス番号などのついては「日本国際貿易促進協会」(電話:03−3506−8281)発行の「日中貿易必携」(本体価格3,000円)という小冊子に詳しく記載されている

d)  海外の輸出業者のダイレクトリーで調べる。

ダイレクトリーはジェトロのライブラリー(本館6階の情報サービス室)に各地のライブラリーがそろっている。そこから輸入希望商品の輸出業者を拾い直接引き合いの手紙を出す。海外の商工会議所や業界の団体になどに供給先紹介の依頼の手紙をだす。

e)  インターネットを使って供給先を探す。

インターネットで海外のメーカーを検索したり、貿易関連のニュースグループで引き合いを出したり、輸出入の掲示板で供給業者を探すことも出来る。

f)  弊社の如くの輸入代理業者やコンサルタント会社に相談する

業者により輸出業者やメーカーの詳しいデータを持っているところもある。例えば弊社などは食品関連の輸出企業はデータも比較的豊富だが他の分野は上記の如くのプロセスで探すことになる。

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輸出業者の信用調査

ダイレクトリーなどで調べただけでは相手が信頼できる供給先か判りにくい。調査をしないためにあとで大きな問題を起こすより事前に十分なる調査をすることが必要である。

一番良いのは自分が実際に現地に出張して相手先を訪問する事である。日本にいたままで調査をするには専門の調査機関に頼んだり銀行経由信用照会をする方法がある。

専門の業者としては、ダン・アンド・ブラッドストリート社が有名。この会社の日本法人D&Bインフォメーション・サービス・ジャパン(Tel 03-3481-3561)或いはジェトロ( 情報サービス課 Tel 03-3582-5549)もやってくれる。ジェトロの場合料金は会員か非会員かにより或いは相手先の所在地により異なるが非会員の場合12,000円(アメリカ)から38,000円(中南米、アフリカ、中近東)である。

銀行経由の場合は問い合わせ方にもよるがありきたりの返事しか帰ってこない場合が多くやはりジェトロ経由で調べるかかダン・レポを取り寄せた方が良い。

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輸入規制、制度、法的規制などの確認

輸入商品によっては自由に輸入できないものもある。例えば輸入禁制品で無いか輸入割当品目では無いか、薬事法、酒税法などの規制を受け免許など資格を持つものでないと輸入できないものもあるし、植物防疫法、家畜伝染病予防法などの規制を受けて特定の国や地域からは輸入できない品目もある。又、制度を調べる際に輸入税番税率を調べておく必要がある。これらの調査は乙仲(通関業者)に聞くとか、税関及び関連官庁に問い合わせる必要がある。東京税関の税関相談官電話番号は03−3472−7001である。

「実行関税率表」(日本関税協会、TEL:03−3263−7345発行)とか「貿易手続全解」(貿易広報社,TEL:03−3543−1721発行)などの本でチェックすることも出来る。

一部の品目についてはジェトロのホームページでも「商品別輸入手続便覧」があり一部の商品の輸入制度や注意すべき点を説明している。

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引き合いの開始

海外の輸出業者に商品の価格、スペック、包装、納期、とともに決済条件などを問い合わせる。カタログ見本も必要に応じて取り寄せる。

インコタームズ

輸入の場合の価格条件は費用と危険の負担の仕方によりFOB,C&F,CIFなどのトレードタームを付けて出される。例えばFOB Melbourneはメルボルンの港に停泊している船舶の甲板のレールを超えた時点と場所で費用と危険が買い手側に移る条件である。即ち輸出側にしてみれば貨物本体の価格に輸出梱包代金、工場から港までの運賃船積み費用現地の輸出通関費用などを加えた価格である。海上運賃や海上保険は買い手の手配と負担になる。

貨物本体のC&F Yokohamaの場合は運賃込みの値段であるが保険は買い手の費用となる。CIFは海上保険まで売り主が負担する建値である。但しC&FもCIFも危険負担はFOB条件の場合と同じく貨物が積み込まれた時点で売り手の手を離れる。

これらトレードタームの定義はインコタームズ(INCOTERMS)として国際商工会議所で規定されているが、最近の改訂は1990年と2000年にされている。いくつかの改定点うちC&FはCFRと記載されるようになっている。又、コンテナー輸送の一般化に伴いコンテナー輸送や航空貨物の輸送にも適応できるようなタームも加わり全部で13のタームが規定されている。

コンテナー輸送の場合現行の1990改訂ではそれ以前までに使われていたC&Fの代わりにCPT(Carriage Paid To)が使われる様に立った。しかし未だなじみが薄いこともあり相変わらずC&Fが使われることが多い。 1990年改訂インコタームズはコンテナー輸送や水陸複合一貫輸送などの輸送形態に合ったタームが規定されているのでこれの普及をはかるべきと考える。

1990年インコタームズ
 

E類型:出荷条件

EXW 

「工場渡条件」

Ex Works 

F類型:主要運送賃買主負担条件 

FCA 

FAS 

FOB 

「運送人渡条件」 

「船側渡条件」 

「本船渡条件」 

Free Carrier  

Free Alongside Ship  

Free On Board 

C類型:主要運賃込条件

CFR 

CIF 

CPT 

CIP 

「運賃込条件」 

「運賃保険料込条件」 

「輸送費込条件」 

「輸送費保険料込条件」 

Cost and Freight  

Cost, Insurance and Freight  

Carriage Paid To  

Carriage and Insurance Paid To 

D類型:到着条件

DAF 

DES 

DEQ 

DDU 

DDP 

「国境持込渡条件」 

「本船持込渡条件」 

「埠頭持込渡条件」 

「仕向地持込渡(関税抜き)条件」 
「仕向地持込渡(関税込み)条件」 

Delivered At Frontier  

Delivered Ex Ship  

Delivered Ex Quay  

Delivered Duty Unpaid  

Delivered Duty Paid 

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コスト計算

建値により運賃や保険料をを加えるか否かの違いはあるがそれ以外には銀行諸掛かり、輸入税、陸揚げ諸掛、保管料、配送料、金利などを加えて計算する。

下記はイタリア産のスパゲッティを1コンテナー(20x500グラム1800カートン入り)を輸入する場合のコスト計算である。港に近い営業倉庫に入れた状態でのコストである。従い地方に配送する場合は配送ロット、仕向地等により運賃が変わってくるのでこれを加味して配送料を加算する。また営業倉庫の保管料は2期分しかみていないので更に保管機関が伸びる場合はそれに応じて保管料及び金利を加算する。
 

C&F

US$0.55/kg

10kg/cc

2,000cs

20,000kg

Ex.@110

1,210,000

Insurance

0.7%

9,317

L/C開設料

0.30%

3,630

銀行諸掛

15,000

輸入税

\31.67/kg

633,400

THC

20,000

通関手数料

11,800

食品手数料

10,000

取り扱い手数料

20,000

コンテナー横持ち料

20,000

バン出し入出庫

2,000/m3

60,000

保管料

500/m3

X 3期

45,000

ラベル印刷料

50,000

小計

2,108,147

同上キロ当たり

105

commission (%)

10%

210,815

合計

2,318,962

同上キロ当たり

115.95

500g袋あたり

\57.97

 

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決済条件

信用状(L/C)決済

対外決済で輸入者、輸出者ともに安心できる決済方法である。即ち輸出業者にとっては海外の信用状況も良く判らない輸入業者に変わって輸入者の取引銀行が決済を保証してくれることになり売り先に対する信用リスクをヘッジする事が出来る。

従い輸出者にとって買い手である輸入者がこれまで取引もなく、信用状況も今一つ判らないような場合でも、信用状で決済するという事なら安心して取引が出来る。また。買い手にとっても、信用状に商品の企画や品質や数量の証明書を要求したり、船積み期限、船積地、荷卸し港等の条件を規定することで間違いの無いものを船積みしてもらえるという安心が出来る。

但し輸入業者に代わって信用状を開設する銀行は輸入業者からそれなりの担保を取ったり、特に輸入ビジネスを最初に始めようとする顧客からは、ちゃんとした輸入ビジネスの事業計画書を要求するなどの備えをしている。従い、信用力に乏しい輸入業者は自社の取引に必要な十分なる信用状開設枠を確保できない場合がある。そんな場合、その輸入業者は信用状開設枠に余裕のある他の輸入業者や、輸入代行をやってくれる業者に、信用状の代理開設を依頼する場合もある。

信用状開設の費用は信用状の機関によりまた仕向国により、開設銀行により、依頼する輸入業者の信用度や信用状の開設金額によっても大きく違うが、信用状開設金額の0.3%位から0.1%を切る場合もありまちまちである。また少額の場合はミニマムチャージが適用される。ミニマムは19,000円位である。それに信用状を通知銀行に連絡する際の電信料が字数に応じて取られる。

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信用状無しの荷為替手形決済

信用状による決済も正確には信用状に基づく荷為替決済であるが、信用状無しの荷為替決済の場合は輸出者が輸入者を名宛人とし、輸出者の為替取り組み銀行を受取人とするする為替手形を、振りだし決済するものである。荷為替手形は為替手形に貨物の船荷証券や保険証券、インボイス、その他の船積み書類を添付した手形である。

為替取り組み銀行は、輸入国の取り立て銀行宛、荷為替を取り立てに回わす。輸入者が代金支払いと引き替えに書類を渡す条件をD/P(Document against Payment)といい、引き受けと引き替えに(即ち支払いを確約することと引き替えに)、船積み書類を渡す場合をD/A(Document against Acceptance)と呼んでいる。

輸出者にとっては手形を銀行経由で取り立てるとは言え、輸入者の支払いを銀行が保証するものでないので、リスクがあり輸入者が信用されないとこの決済条件を受けてもらえない。その反面、信用状開設費用などの費用がかからないなどのメリットがある。

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外貨送金

少額の場合に信用状開設に伴う費用が割高になるとか、輸入業者の信用度が十分でない場合などは、外貨送金で決済する場合もある。輸出業者をよく知っている場合や信用度の高い輸出業者の場合は前払いしても良い場合もあるだろう。しかしながら、信用度の低い輸出業者の場合や、取引の日が浅い相手のことも良く判らない場合にはリスクがあるので、前払いは避けるべきである。

日本の会社で初めてアメリカからものを輸入するときに、たまたま輸出をする相手が日本人であり信用して前払いしたが倒産して貨物も船積みされず前払い代金も帰らなかったという事も聞くので慎重にすべきである。

弊社の場合は送金で決済している相手先も有るがその会社の社長は10数年来の知り合いの会社で且つ、一部前払い、一部は後払いの決済とし、且つ前払い残高はもし引っかかっても経営上大きく響かないような金額にとどめている。

送金方法

下記の方法があるので金額の多寡とか緊急度や相手との了解に基づき選択する。

1)電信送金(Telegraphic Transfer)

 送金銀行と支払銀行の間に取引関係があるかどうかなどにもよるが早い場合は同日或いは翌日には入金できる。費用は送金料2,500円電信料1000−4000円等銀行によっても仕向先によっても違う。 (送金料、電信料合計で4,500円の銀行も有る)

2)文書送金(Mail Transfer)

 銀行間の送金の通知を文書で行うもので入金まで1週間から10日くらいかかる。送金料は2,500円だがメール代が電信よりかなり割安。精々1000円までか。(電信送金と変わらず、送金料、電信料合計で4,500円の銀行も有る)

3)送金小切手(Demand Draft)

 銀行が発行し銀行をを支払人とする外貨小切手を入手し、それを相手先に送ると相手はそれを銀行に提示して取り立てに回して貰う。送金料2,500円に自分で送るときの切手代がかかる費用。(銀行によって費用が違う)

4)郵便局による外貨送金

上記はいずれも銀行によるものだが郵便局でも送金をしてくれる。送金できる通貨に制限があるし(例えばオーストラリア向けには豪州ドルの送金しか出来ないなど)、相手が口座を持っていないと入金できないなどの制限があるので相手に事前了解を取る必要がある。小額送金の場合には費用的に銀行経由の送金より若干手数料が安い。

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その他の決済方法

個人輸入などで一般的に行われる方法だがクレディット・カードによる決済。手間がかからず、外国通貨の為替レートも特に不利にはならないので小口の代金の決済には便利である。

新外為法が施行された1998年4月1日以降は相手方との借り方勘定・貸し方勘定の相殺も可能になる。また海外に外貨預金口座を持つことでその口座からその外貨で送金したり入金もその口座にして貰うとか、或いは第3者を介在させてネッティングを行う事で決済するなど決済方法が多様化してくるし競争激化により銀行の手数料も大幅に下がることが期待できる。

為替レート

外国との貿易取引で決済通貨を日本円以外の外国通貨で行う場合は為替相場の影響により取引の採算に大きく影響してくる。契約の時には大きな利益が見込めた取引でも、実際の代金決済時の為替相場如何では思わぬ損失を被ることもある。為替変動のリスクを如何にコントロールするかは貿易取引の利益確保の上で非常に大切なことである。

対顧客レート

外国の通貨では米ドルを契約・決済上の通貨に使うことが多い。新聞やテレビなどで言われる為替レートは銀行間の取引レートである。普通の場合銀行のマージンは1米ドルにつき1円である。対顧客レートは毎日午前10時に公表される。送金などドルの支払いには銀行間のレート+1円(TTSレート)を、ドルの受け取りには銀行間のレート−1円(TTBレート)が対顧客レートとして発表される。高額の決済の場合は銀行の手数料は1円より少なくなるが、銀行によっては金額に拘わらず考慮するところもある。新外為法が施行される98年4月以降の規制緩和に向けての競争激化から手数料の幅はますます縮まるものと思われる。

為替リスクコントロール(為替予約)

輸入契約をしてから為替が大幅に円安になった為に、もともと儲かる筈のものが実際は損が発生したということはよくある事だ。為替レートの動向は非常に予測しがたく、専門家のアナリストなどでも予測が当たることは非常に少ない。従い外貨建ての契約を行ったら基本的に為替予約を行って為替変動のリスクをヘッジする事が賢いやり方である。

とは言っても実際面では過去の円高に推移した過程での思わぬ利益が頭にあり、なかなか契約と同時に為替予約が出来ない場合もある。そんなときにもし円安になったら大きく損をする前に予約することだ。もう少し待ったら円高に戻って損が取り戻せるだろうと考えているとますます損が膨らみ「今更予約できない」というような状態になることがある。為替で儲かっても所詮一時のはかない利益と割り切って契約したら迷わず予約する事にしたい。

通貨により為替予約を日本でるより輸出国でやる方が有利なレートがとれる場合がある。例えばオーストラリアドルの場合日本の為替市場ではオーストラリアドルの取引が少ない為に対顧客レートが良くない。銀行間の取引相場即ち中値からの銀行のマージンは1円75銭くらいある。日本でオーストラリアドルを予約する代わりに、オーストラリアで予約して日本からは円を送って輸出国でオーストラリアドルにに替えて決済する方が銀行のマージンが少ない為に良いレートで予約できる。
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貨物輸送

CFR或いはCPT条件で契約した場合は海上輸送を輸出者が手配し且つ運賃も輸出者が支払うので船会社や運賃の事をあまり気にしない場合が多い。しかしFOBやFCAで契約した場合は船会社との輸送予約、運賃の支払いなどは輸入業者の責任になる。船会社により、輸送方法により運賃もかなり違うのでどの船会社の便に乗せるかで輸入コストもかなり変わってくる。

運賃同盟船と盟外船に因る運賃差

北米航路、欧州航路或いはオーストラリア航路など船会社間で運賃協定を締結している同盟船の場合は一般的に運賃が割高だが、便数が多いとか航海日数が早い、船会社がしっかりしているなどの利点がある。日本の船会社はたいてい同盟に加盟している。一方盟外船は中国、台湾、韓国、ロシアなどの船会社が就航しているが運賃が安い代わりに便数が少ない、航路によっては寄港地が多く航海日数が長いなどの欠点がある。船積みが急がれる場合は同盟船を使うとか採算がきつい商売には同盟外船を使わざるを得ないとかケイスバイケイスで使用する船会社を決めることが多い。

年間を通して継続的にかなりの量の荷物が有る場合は特別運賃を設定できる場合が多いので何社かの船会社に当たり交渉することが得策である。商品代金に占める運賃の割合が高いような商品は少しの運賃差でも商売の採算にずいぶんと影響がでてくるのでこまめに当たることが必要である。

FCL貨物とLCL貨物

コンテナー単位の契約であれば、普通の場合積み地では、荷主がコンテナーに貨物を詰めてそれを船会社指定のCY(コンテナーヤード)にコンテナーを持ち込み、揚げ地では受け荷主がCYでコンテナーを受け取るという形をとる。かかるコンテナー単位の貨物をFCL(Full Container Load)貨物と呼ぶ。契約はいつもコンテナー単位ばかりとは限らない。小口の貨物の場合は、船会社指定のCFS(コンテナー・フレイト・ステーション)に荷物を持ち込み、船会社が他の荷物と混載してコンテナーに詰め、揚げ地ではCFSでその小口貨物を受け取るという形がLCL(Less than Container Load)貨物である。LCL貨物は船会社が小口貨物をまとめるやり方だが、フォワーダーが小口貨物を集荷して自社でFCL貨物にして運び揚げ地の自社の荷渡し場所で貨物を引き渡す場合もある。運賃は一般的に船会社のLCL貨物の運賃よりフォワーダーが集荷する貨物運賃の方が割安な場合が多い。

コンテナーの種類

コンテナーのサイズにより20フィートコンテナーと40フィートコンテナーがある。又、一般貨物を詰めるドライコンテナー、冷凍冷蔵貨物を積むリーファーコンテナーなどの他、液体を運ぶタンクコンテナー、バラの穀物などを運ぶバルクコンテナーなど特殊なコンテナーもある。よく使われる20フィートコンテナーの場合、重量では約18トン、容積では約30立方メートルが最大の積載量である。40フィートコンテナーは積載量も大きいが日本で内陸部までコンテナーのまま輸送する場合は日本の道路の車両制限令で制限されている範囲内しか詰めないのでこの点気を付ける必要がある。

コンテナーのサイズ

 

20フィート

40フィート

内側寸法 

長さ(mm 

幅 (mm 

高さ(mm 

5,892-5,934

2,331-2,354

2,246-2,263

12,052-12,062

2,342-2,362

2,367-2,389

扉開口寸法 

幅 (mm 

高さ(mm 

2,340-2,342

2,134-2,154

2,345-2,300

2,265-2,272

内 容 積 

(立方米) 

30.0-31.0

66.5-68.1

自   重 

KG 

2,320-1,600

3,410-2,900

最大積載重量 

KG 

18,000-18,720

27,070-27,580

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B/L(船荷証券)

貿易に於いて通常は実際の貨物の受け渡しをする代わりに、B/L(船荷証券)の授受を以て貨物の受け渡しに代えている。輸出者はあらかじめ貨物の輸送契約を行った船会社に貨物を渡し、船積み後、B/Lを船会社より受け取る。輸出者は代金決済と引き替えに船荷証券を輸入者に渡し輸入者はB/Lを陸揚げ地で船会社に渡し貨物を引き取る。輸入者はB/Lに裏書きしてそのまま実際の需要者に渡しその需要者が船会社にB/Lを渡して貨物を引き取ることも出来る。即ちB/Lは貨物の受領証や運送契約を表す証拠書類としての機能のほかに、有価証券としての機能も持っている。

信用状で要求するB/Lの条件として下記の如くの記載がされる事が多いがこれについて概略下記説明したい。

Full set of clean shipped on board ocean Bill(s) of Lading made out to order of shipper endorsed in blank marked freight prepaid notify ABC, Inc.

Full set: B/Lの発行通数は通常2通とか3通の複数通発行される。1通だけだと郵送途中で紛失する場合もあるので、船積み書類の送付を2回以上に分けて送付する必要性がある。そのためにB/Lは複数通発行される。B/L面には何通発行したか記載されるので、発行されたすべての通数を揃える必要があるということ。

Clean: 船積みされた貨物に個数不足があったり、包装が痛んでいたり汚れているなどのダメージがあった場合、B/L面にその旨Remarksが記載されるが、それをFoul B/Lという。かかるRemarksが無いB/LをClean B/Lという。実際はRemarksが付くと輸出者は船会社に補償状を入れてRemarksをとったClean B/Lを発行してもらうケースが多い。

Shipped on board B/L: これに対するB/LとしてReceived B/Lがある。昔在来船の場合はB/Lの最初の出だしは "Shipped on board the vessel, the goods in apparent good order and condition......." で始まるshipped B/Lが殆どであったが最近はコンテナーが多いので "Received by the carrier from the shipper in apparent good order and condition ......." の如くの文言で始まるReceived B/Lが多くなっている。即ち、船会社は船積み前でもコンテナーヤードで貨物を受け取った段階でB/Lを発行する。信用状でshipped on board B/Lが要求されていたらB/L面に実際に船積みされた事とその日付を証明するサインが無くてはならない。これをOn board notationというが、Received B/LでもこれがあればShipped on board B/Lになる。また、B/LのフォームはCombined Transport B/L(複合運送船荷証券) のものが使われる場合もあるがこれもOn board notationがあればShipped B/Lとなる。厳密にはB/Lの裏面約款をチェックしておくことが望ましい。

To order of shipper endorsed in blank: B/LのConsignee(荷受け人)にたいする指定である。この場合は荷受け人は「shipperの指図人で白地裏書きにより譲渡可能」ということを意味する。この場合はB/Lの裏面にshipperがサインをした上で銀行に持ち込む必要がある。

このほか、order of ABC Bank, Ltd. というような指定もある。これは「信用状の開設銀行(ABC Bank, Ltd.)の指図人」が荷受け人になる。この場合輸出者はB/Lの裏面にサインはせずに銀行に持ち込む。

Freight Prepaid: 運賃は前払いしたということ。C&F契約によるB/Lは運賃を輸出者が前払いするがFOB契約の場合は運賃を輸入者が払うのでFreight Collectとなるのが普通である。

Notify: 揚げ地の船会社が出すArrival Noticeの連絡人(Notify party)である。普通は輸入者が指定されるが、輸入者の代理のフォワーダーを指定されることもある。

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海上保険

輸入貨物は輸送中に、大は本船の沈没から、小は貨物の水濡れや破損など様々なリスクが存在する。更に、自分の貨物に事故が無くても共同海損という概念により、本船が公開中に座礁、火災などの危険を回避・軽減するために行った貨物の一部の海中投棄などの費用を共同の損害として負担せねばならないことがある。これらの危険に因る損害を補填するために海上保険を掛ける必要がある。

時折、「これまでに殆ど事故が起きないし、事故が起きても大きな事故でないので後の保健求償の処理が大変などで保険は掛けない」という人もいるが、事故や損害は忘れた頃にやってくるので、輸入取引には必ず保険を掛けることが望ましい。

保険を売り手に掛けて貰うか(この場合契約はCIF条件となる)、買い手が掛けるか(この場合はFOB或いはC&Fの条件になる)どちらが良いかは商品により、及び輸出国により変わってくる。

保険条件

保険付保に当たって商品の性質や包装形態により付保条件を考えて、効率のよい付保を行う。保険条件及び担保する損害の関係は下記に分類される。

保険条件及び損害の種類

オールリスク(A/R)

分損担保(W.A.)

分損不担保(F.P.A.) 

火災・爆発

全損・分損とも支払い 

全損・分損とも支払い

全損・分損とも支払い

沈没・座礁・衝突

全損・分損とも支払い 

全損・分損とも支払い

全損・分損とも支払い

脱線・転覆

全損・分損とも支払い 

全損・分損とも支払い

全損・分損とも支払い

潮濡れ

全損・分損とも支払い 

全損・分損とも支払い

全損のみ支払い

積込、荷卸中の梱包1個毎の全損 

支払い

支払い 

支払い

雨水濡れ

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

支払わず 

汗濡れ・むれ損

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

支払わず 

擦損・鈎損

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

支払わず 

虫食い・鼠食い

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

支払わず 

盗難・抜荷・不着

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

追加付保で支払い 

破損・曲がり・凹み

全損・分損とも支払い

追加付保で支払い 

追加付保で支払い

漏出・不足

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

追加付保で支払い 

汚染・混合

全損・分損とも支払い 

追加付保で支払い

追加付保で支払い 

共同海損

全損・分損とも支払い 

全損・分損とも支払い

全損・分損とも支払い

 

戦争保険とストライキ危険保険

戦争、ストライキ、市民暴動危険は免責となっているので別途付保する。

保険期間

貨物の仕出地の倉庫から仕向地の倉庫まで。ただし本船から荷卸し完了後60日(飛行機の場合は30日)を経過した日まで。また、仕訳配送のために任意の保管場所に搬入された時点まで。

FRANCHASEとEXCESS

保険担保の免責方式で、FRANCHASEは損害が一定の割合を超えたら、損害の全額を支払われるが、一定割合未満の場合は支払われない。これに対しEXCESSは一定割合を超えた部分に対してのみ支払いがなされるという方式である。
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通関、貨物引き取り手続き

通関手続きは普通の場合輸入業者に代わって通関業法により税関長より許可を受けている通関業者が行う。輸入業者は貨物の到着に間に合うように船積み書類を入手して予め通関業者に必要書類を渡し、通関を依頼しておく。

通常通関業者に下記の如くの書類を渡す。

  1. インボイス
  2. 運賃請求書(FOB契約の時に必要)
  3. 海上保険料請求書(C&I或いはC&F契約の時に必要)
  4. そのほか商品により、或いは契約形態により必要とされる書類。たとえば植物検疫が必要な貨物の場合は輸出国の政府機関の検疫証明書が必要。また食品などは通関に先立って厚生省管轄の各港の食品検疫所に「食品等輸入届書」を提出する必要があるので、この届書及び必要な添付書類も提出する必要有り、予め十分通関業者と打ち合わせしておく必要がある。また契約形態に依って契約書の写しや、説明書等が必要な場合もある。
  5. B/L。船会社からの貨物引き取りの為に渡しておく。貨物到着までに船積み書類が到着していない場合は銀行に貨物引き取りの保証状にサインをしてもらい、これを渡して貨物の引き取りが出来るようにしておく。

申告価格はCIF価格が基準になる。税関により申告書類が審査され、輸入税と消費税を支払うと輸入許可になり、貨物の引き取りが出来る。

税関手続きに関する説明は大蔵省の「税関ホームページ」にも掲載されている。

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関税率・関税番号

輸入契約をする際に輸入する商品の関税率・関税番号を予めチェックして輸入コストの計算をするわけだが、このチェックは普通関税協会(Tel: 03-3263-7221)で発行している「実行関税率表」(\24,000)で行う。通関業者に聞いても教えてくれる。

関税率には下記の種類がある。

  1. 基本税率
  2. 暫定税率
  3. 特恵税率
  4. 特別特恵税率
  5. 協定税率

基本税率、暫定税率、特恵税率、特別特恵税率は国定税率といい国で決められた税率である。協定税率は条約により定められた法律である。協定税率が適用される場合はWTO加盟国からの輸入と関税に関する最恵国待遇の協定国からの輸入の場合である。

協定税率と国定税率を比べいずれか低い方の税率が適用される。暫定税率は基本税率に優先される。

特恵税率

先進国が開発途上国の産品の輸入に際し関税を軽減或いは免除することにより輸入を促進させ発展途上国の貿易収支を改善させようという制度。特別特恵税率とは特に後発の発展途上国からの輸入にさらに便宜を与えている税率。

特恵税率を受けようとする場合は輸入申告に際して原産国の政府機関またはそれに準じる機関で発行された原産地証明書(FORM-A)を提出する必要がある。

契約書

契約が成立したら英文で契約書を作成して輸入者として「買い手」のところにサインをしてそれを2部売り手に送り、売り手の確認のサインをしたものを1部送り返して貰う。契約直後は双方契約の条件も覚えているが実際に船積みをする頃には条件の細かいところまで覚えていないこともあるし、もし何らかの問題が発生した場合は契約書に基づいて解決を図ることが多いので、契約書を発行することは必要である。

品名、数量価格、包装、品質条件、船積期、決済条件等の取引上の最低条件を記載した表面条項と細かい取引条件を記載した裏面条項の見本を参照願う。

(続く)
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