気楽に・・・・English・・・・・・・Page 279


 
11/25/98    テキサスの川又さんからの情報


 キャスターして活躍されている安藤優子さんの”あの子は英語がしゃべれない”より、
 この本は、安藤さんの留学経験を通してアメリカと日本との文化の違いを教えてくれ
 る貴重な一冊です、アメリカに興味のある方に、お勧めしたい本です。
 
 
 “アンドウさん、これから何が出来ますか? と聞かれたら、たとえそれがあなたの
 大得意とすることであっても、ハイ少々は、と答えなさいな”

 アメリカ交換留学から帰国し、再度アメリカの大学にもどるために手あたりしだい
 にアルバイトに精を出していたとき、偶然声をかけられたイギリスと日本の商社と
 の合弁会社のアルバイトのオーディションで、審査にあたったその会社の重役にか
 らこのように言われた。
 なんでも私を採用するかしないかで意見が真っ二つに割れ、採用を否とした人達の
 共通の意見は“あのこは見かけは日本人でも、中身はアメリカ人だから、きっと団
 体の中での火種になるに違いない”というものだったらしい。
 他方、私の採用を是としたのは、イギリス人の重役や年長の人事担当者で、”ああ
 いうはっきりものをいうこがひとりぐらいまざっていないと全体の元気がなくなる”
 と主張したという。
 双方の言い分はどちらにしてもわたしには興味がなかったが、けっきょく採用になっ
 たわたしの将来を案じた審査員の一人が”はい少々といいなさい”と注意してくれた
 のだ。
 
 それにしてもなぜわたしは外見は日本人でも中身はアメリカ人と断定されたのか。
 面接でなにがそう思わせたのか? たかが1年間の留学という経歴だけでだけで、
 人間の審美眼においては海千山千のそんなことを危惧するとは思えない。
“あのう、なんでわたしがアメリカ人で、団体行動の火種になると判定されたので
 しょうか?”おせっかいでもなくこの娘のゆくすえを心配しているといったふう
 の野の審査員に聞いてみる。
“いやー、あなたはなんでも自身満々に言うからよ、テニスは?と聞きゃハイばっ
 ちりです、だろ。じゃ英語はどのくらいとたずねればハイまかせてください!で
 しょ。 いいんだよ素直で。でもねなんて言うのかな、日本人としてのオクユカ
 シサつうもんが感じられないわけだな、わかる?”
 昨日まで、アメリカで”少しでもできることはできます!とこえをあげねばなら
 ぬ”と奮闘してきた私には、この審査員の言わんとしているところをのみこむま
 でにしばらく時間がかかった。

 “オ、ク、ユ、カ、シ、サ、ですか!?”

 “そう、日本人の美徳だわな。たとえそのことに人並み以上に長けていても、自分
 からは言わない。他人がそう評価してくれたら。まそれほどでも、オッホッホと
 なるわけだ”

 “.........”

 “ま採用になったからにはうまくやりなさい、くれぐれもハイ少々でいくんだよ”
 呆然とたたずむ私の肩をなれなれしくたたいてその重役はさっていった。“ハイ
 少々....”か、あらためて口にはしたものの、なんだか自分を裏切っている
 ように思えてくる。なぜ? できることをできると堂々と言ってはいけないのか、
 少々しかできないことでも”できる”と胸を張るアメリカ流も考えものだなと思
 っていたが、”できる”ことでも”あまりできない”と表現する日本もどこか変
 だ。大きな穴にずっぽり落ち込んだような気がした。
 

   

  
 日本人の中でもどちらかというと「おくゆかしい」川又さんは同じような葛藤を
 逆の面から、人一倍経験しているのでは?

 そんな彼だからこそ、この本は大変気になるものであったに違いない。


 
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