混声合唱とピアノのための
      ふるさと
     
 明治・大正・昭和の唱歌編曲集

      村の鍛冶屋
      
文部省唱歌  編曲 寺嶋 陸也

暫時(しばし)もやまずに 槌(つち)うつ響。
飛び散る火の花、走る湯玉(ゆだま)。
鞴(ふいご)の風さえ 息をも継(つ)がず、
仕事に精出す 村の鍛冶屋。

あるじは名高き いっこく老爺(おやじ)、
早起早寝の、病(やまい)知らず。
鉄より堅(かた)しと ほこれる腕に
勝(まさ)りて堅きは、彼がこころ。

刀(かたな)はうたねど、大鎌(おおがま)小鎌(こがま)、
馬鍬(まぐわ)に作鍬(さくぐわ)、鋤(すき)よ、鉈(なた)よ。
平和のうち物 休まずうちて、
日毎(ひごと)に戦う、懶惰(らんだ)の敵と。

かせぐにおいつく 貧乏なくて、
名物鍛冶屋は 日日(ひび)に繁昌(はんじょう)。
あたりに類(るい)なき 仕事のほまれ、
槌うつ響に まして高し。