T みなかみ
いまうまれたばかりの川
山の光は
小鳥のうぶ毛の匂。
若草と若葉のかさなりは
天へつづくみどりの階段。
阿蘇外輪の春。
熔岩の寝床で
いま生れたばかりの川
すがすがしい裸の愛が
頬をあからめて歌いだす。
素足でげんきよく走りだす。
さあ遠い旅行がはじまる。
けものの白い骨を
狩人の墓を洗い
森のくらさをおそれずに
滝の高さをおそれずに
さあ未知のくにぐにへの旅行がはじまる。